チャットボットはどうやって文脈を理解するの?生成AIの仕組みを紐解く

皆さんは、ネットバンクや携帯電話の通信会社のウェブページを見ているとき、右下にアシスタントのチャットボットが表示されているのをよく目にすると思います。
時々、どうしても手順が分からなくてそのチャットボットに尋ねることがありますが、「こいつ、全然分かってないな~」と感じたことはありませんか。

以前のチャットボットはキーワード検索に頼るものが多く、文脈を理解するのが難しいものでした。しかし、生成AIの登場により状況は一変、より自然な対話が可能になりました。
本記事では、生成AIがどのように文脈を理解し、最適な回答を導き出すのか、その仕組みに迫ります。

旧来のチャットボットと生成AIの違い

生成AIが登場する前から、「チャットボット」というサービスはもう何年も存在していました。それは対話形式でキーワードを検索し、ユーザーが望む手順が書かれたページに導いてくれるものでした。でも、「ロボット」であるがゆえにキーワードしか理解できず、誰しもが「話が繋がっていない」と感じることがあったでしょう。そもそも、やりたいことを一つのキーワードで説明できれば、こんなに苦労はしませんよね。だからこそ、生成AIは本当に助かる存在です。なぜなら、生成AIのチャットボットは単なるキーワードだけでなく、文脈からユーザーの意図をより深く理解し、適切な提案を考えてくれるからです。

生成AIはなぜ文脈を理解できるのか?

では、生成AIが文脈を理解できる理由は何でしょうか。それが今回のテーマです。
生成AIの原型は「語意分析」にあります。これは、自然言語処理というデータサイエンスの一分野で、人間が機械に会話に隠された本音や気持ちを理解させるために開発された技術です。長い年月をかけた発展を経て、今の語意分析は会話を分解して理解するだけでなく、意味的に近い単語をつなげて意味のあるフレーズや文章を作り出すことができるようになりました。これこそが生成AIチャットボットの本質です。

生成AIの仕組みとは?

その仕組みは、言語学と数学に立ち戻って考えると分かりやすいです。誰でも知っているように、文章の一文の基本は主語と述語の組み合わせですが、そこに修飾語や接続詞などさまざまな要素が加わります。そのため、まずは「分解モデル」が必要になります。このモデルは事前の訓練を通じて、名詞や動詞、形容詞が助詞や副詞でつながる構造を理解した上で、文章を単語単位に分解します。しかし、分解された単語をそのまま分析することはできないので、もう一つの「数値化モデル」を使います。このモデルは過去の訓練データに基づいて単語を分類し、ベクトルに変換します。ここでいうベクトルは、数学の授業で習った「南に3歩」といった単純なものではなく、単語一つにつき少なくとも384方向、多い場合は3000方向を超える複雑な集合で表現されます。この「分解モデル」と「数値化モデル」を組み合わせたものが「埋め込みモデル」と呼ばれ、ベクトル化された単語は「トークン」と呼ばれます。これが語意分析の基礎となります。

生成AIの回答はどのようにつくられるのか?

分析自体は、意味的には意外とシンプルです。すべてのトークンを比較し、「似ているもの」を並べていく作業です。ここでまた新たな「検索モデル」が必要になります。このモデルには数学的な「近似度」のアルゴリズムが組み込まれており、トークンを選び出して比較し、最適な検索結果を提供します。最後に、関連性の高いトークンを集めて「生成モデル」で単語に変換し、言語学的に組み立て直して回答を生成します。この一連の流れ、つまり「埋め込みモデル」から「生成モデル」までのプロセスが、いわゆる「大規模言語モデル(LLM)」と呼ばれるものです。こちらの取り組みの見取り図です。

まとめ

今回はチャットボットの回答の仕組みについて記事にまとめました。
従来のチャットボットはキーワード検索に頼るため、意図が伝わらず使いにくいことがありました。しかし、生成AIの登場により、文脈を理解し、より自然な会話ができるようになりました。その背景には、語意分析を活用した高度なモデルの組み合わせがあります。今後、さらに精度の高いチャットボットが登場し、私たちの生活やビジネスをより便利にしていくでしょう。
次回は、もっと深い話や生成AIの他の応用方法などについて書きたいと思います。

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執筆者紹介
洪 維均(こう いきん)
2024年中途入社。事業推進部企画開発第1チーム所属。
大学時代は衛星画像分析と統計学を専攻。
金融や卸売り業界を経験し、現在はデータコムでデータサイエンティストとAI開発を担当。
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