人口のみ減少する時代から世帯数も減少する時代へ、更に世帯構成人数も減少する三重苦の時代!?
人口や世帯数の変化は小売業に直接的な影響を及ぼしています。
特に人口の減少が注目されがちですが、実は世帯数の減少も同じように深刻な問題となり得ます。
今回は高齢化社会の進展と世代別の変化を踏まえ、なぜ世帯数の減少が小売業にとって大きな課題となるのか、
そしてそれにどのように対応していくべきかを掘り下げていきます。
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世帯数の減少が小売業へもたらす影響とは
人口減以上に小売業への深刻な影響が懸念されるのは、世帯数の減少です。
人口減は、幼児、子供や来店できない高齢者も含むすべての人が対象となるため、人口の減少がそのまま顧客の減少につながるわけではありません。
しかし、世帯数ではそうはいきません。
世帯数は言い換えれば店で消費する最小単位ともなるので、ある店の商圏内での世帯の減少数は、そのままその店の顧客の減少数と等しくなる可能性が高いということです。
世帯数の予測推移(こちらは2024年初旬頃までに最新が公表される予定のため平成30年の推計)を見ていきます。
まず全体の予測推移を確認すると、人口減の中、今まで何とかその実数を維持してきた世帯数が、2025年以降、初めて減少に転じることがわかります。(図表① 黒線のグラフ)
更に世帯類型別の推移を比較すると、単身世帯(緑)が唯一増加傾向にあり、ひとり親と子(黄)、夫婦のみ(赤)が微減傾向、夫婦と子(茶)、その他(濃紺、主に2世代以上含む家族)が明らかな減少傾向にあることが分かります。
世帯構成人数が多いほど、減少傾向がより顕著となるこの予測は、世帯数の減少を表すとともに一世帯当たりの消費金額の減少を示唆しています。
この推移が小売業にとって不利になることは言うまでもありません。
高齢化社会でも商圏の実態を捉えた対策が必要
さらに世帯主の年代別に分けた世帯数の予測推移を見ると、人口同様に60代未満は、どの世帯類型においても右肩下がりの傾向が顕著になっています。
最も危惧すべき課題は、明らかにこの60代未満の部分にあります。
世帯主がシニア(60代以上)の場合、60代では単独世帯の世帯数が大きな伸びを予測されており、
70代では単独世帯を除く全世帯が右肩下がり、唯一全世帯で伸びが予測されているのは80代以上のみという傾向になっています。
シニア社会の到来がイメージされる中、世帯主の年代別で見ても、いわゆるアクティブシニア中心の世帯が増加するような社会が予測されているわけではないことがわかります。
ここまで見てきたような人口、世帯数の両推移予測を考慮すると、高齢社会の言葉に引っ張られ、高齢層を重視することばかりに偏り過ぎたり、その逆に、若い世代の取り込みに奔走したりするのではなく、それぞれの商圏の実態をきちんと踏まえた上で、対策を講じることが重要になると考えられます。
今後重要になる3つの対策
取るべき対策については次の3項目にバランスよく対応することが重要です。
❶シニア層では、取りこぼしを失くすこと
❷ファミリー層では深掘り(稼働率アップ)をすること
➌若年層では新規取り込みをすること
それぞれの理由として
❶のシニア層は、減少するわけではないことから、そのニーズを汲み取れずに、需要を取りこぼすことがマイナス要因になるため。
❷のファミリー層の場合、主力となっている客層が人口減に伴い減少すれば、現状の顧客の1人当たりの買上点数や来店頻度などの稼働率をアップさせない限り、売上は維持出来ないため。
➌の若い世代では、そもそもスーパーの利用が少ない世代であり、新規の取り込みが出来ない限り、稼働率の改善で補えるものではないため。
ちなみに対策の難易度は、❶より、現状の改善が必要な❷が高く、新規に取り込みが必要な❸が更に高くなります。
以上見てきたことが、今後の与件として事前に抑えておきたいことであり、それを念頭に置いた上で、次回は年代別支持率について見ていきます。
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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:食品商業2024年2月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第34回」
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