【セミナーレポート】惣菜部門の最新トレンドと利益を生み出すデータ活用-前編-「惣菜から即食へ」
小売業の中でも成長を見せている惣菜部門では、コロナ禍を経て消費者のニーズが多様化する中、「即食」という新たな切り口で生まれ変わろうとしています。そこで、商品開発や製造体制の進化、データ活用による課題解決など、様々なチャレンジや変化の中で起こりうる課題についてセミナーを開催いたしました。今回行ったセミナーでは、惣菜業界の第一線で活躍する株式会社KTMプラニングRの海蔵寺様をお招きし、業界の最新動向とデータ活用について語っていただきました。
第一部:惣菜から即食へ
第一部では「惣菜から即食へ」をテーマに海蔵寺様より昨今の惣菜開発の変化や最新のトレンドについてお話しいただきました。
商品開発は部門横断型に
惣菜という概念が広がる中で、開発体制が大きく変化しています。以前は惣菜部門内での拡大が中心で、安価な輸入原料の使用や他店の商品を参考に開発したり、メーカー品の仕入れが主流でした。しかし、コロナを境に開発体制が変わり、即食という切り口で部門を超えた再編が進んでいます。各社惣菜の考え方が違うので、惣菜の定義自体が難しくなってきており、生鮮惣菜を生鮮部門が開発するのか、惣菜部門が開発するのかといった議論も行われています。
開発体制について最終的にどの部門でやるかは、各社の文化や歴史、考え方によって異なります。ただ、生鮮部門の人が開発する商品は素材の扱い方がうまく、惣菜部門だけでは開発できないような独特の広がりがあると感じています。
また、自社開発・内製化が進み、プロの料理人が商品開発全体に関わるケースが増えてきました。部門横断型の惣菜改革プロジェクトや人事交流も活発化しており、風通しが良くなってきています。
しかし、データ分析の観点から見ると、生鮮部門と他部門の間でデータの共有があまり行われていないという課題があります。部門間のデータ連携は、まだ十分ではないと感じています。これまでは、与えられた利益目標に対してデータを見るといったことが主流でしたが、今後は新たな商品開発のために幅広くデータ分析を行うことが求められます。そのためには、アナリストの育成が非常に重要になってくるでしょう。
作りたてと遜色ない品質の冷凍惣菜
冷凍技術の進歩も、品質向上に大きく貢献しています。マイナス1度からマイナス5度の温度帯を素早く通過させることで、細胞の破壊を防ぎ、ドリップの発生を抑えることができるようになりました。実際に、ある店舗で店内調理された天丼、同じ規格品を調理後急速冷凍された天丼、両方を購入し二つの商品を比較すると、どちらも遜色ない品質を保っていることがわかりました。実際に、ご飯の質感や衣の質感を見ても、冷凍されたものとは判断しづらいほど、クオリティが高く保たれています。お客様の目線としても、当日に調理されたものでなければ品質が落ちるという懸念が薄れてきているのでしょう。
急速冷凍技術を活用することで、季節商品やカットフルーツなどのロスが出やすい商品も、品質を維持したまま提供できるようになりました。こうした技術を活かした商品開発には、アイデア次第で大きな可能性があると思います。
また、人手不足により店舗でのシフト組みが難しい状況でも、センターで調理した商品を急速冷凍することで、品質を維持したまま店頭に並べることができるようになりました。このような技術の進化により、品ぞろえの幅も広がり、人員のシフト組みの問題をある程度解消できるようになってきています。
新P・Bへの関心
最近のトレンドとしては、ペットフード(”P”et)や乳幼児向け食品(”B”aby)など、これまであまり注目されていなかった分野にもチャンスがあります。例えば、ドッグフードも冷凍のものが開発されたり、アレルギー対応の乳幼児向け食品が出てきたりと新たな流れができてきているように感じます。このような商品が出てきているように、ニーズに合わせた商品を提供することで、新たな顧客層を獲得できるかもしれません。乳幼児向け食品については、保育園での子供たちの嗜好なども参考になりそうです。例えば、子供たちが好むカレーや白身魚を使った商品など、データに基づいて開発することで、より受け入れられやすい商品になるのではないでしょうか。このように、まだまだ改革の余地はあると思います。
商品開発体制の変化
商品開発体制も大きく進化していますが、まだ課題もあります。以前は自社開発かアウトパックの2択でしたが、現在ではデリカセンターやインストアでのセントラルキッチン母店方式など、様々な選択肢があります。特に、センター内でシステム対応が進んでいる母店方式は、まだ食品スーパーでは普及していないものの、注目すべき方式だと思います。ただ、システム対応など、導入にはまだ課題もあるようです。
つまり、新しい開発体制を導入するには、それに合わせたシステムの整備も必要になってくるということです。商品開発の進化に合わせて、体制面でも変革が求められる時代になったのかもしれません。
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