SMの顧客における3つの”ない”に着目!来店時間によって特売商品の恩恵を受けられない顧客は2.8人に1人もいる!?

スーパーマーケットの売場では、タイムセールやチラシの特売品など、様々な販促活動が行われています。しかし、全ての顧客がその恩恵を受けられるわけではありません。特に午前中に来店できない顧客は、目玉商品を購入する機会を逃してしまう可能性があります。今回のブログでは、午前中に購買のない顧客の割合をデータで検証し、その実態と小売業が取っている戦略について考えていきます。

午前中に購買のない顧客の割合は?

チラシ初日は特売商品を目当てに、朝早くから多くの顧客が来店することもあります。
そんな商品は、開店後短時間から長くても午前中で完売してしまうことも多いのではないでしょうか。
そこで、午前中までに来店することができない顧客として、年間を通して午前中に購買実績が一切ない顧客の割合を調査したものが図表④です。このグラフにはそれぞれ特定の時間帯(❶緑…開店~12時まで、❷黄…12時~17時まで、❸青…17時~閉店まで)にしか購買がない顧客の割合が年代別に示されています。

図表④ 時間帯別に購買が無い顧客の割合 年代別(全顧客対象)

一見して、❶の午前中しか購買がない顧客の割合が顕著に少なく、12時以降の❷❸の割合が高めであることが分かります。午前中の購買が一切ない顧客の割合を表した折れ線グラフを見ると、左端の平均値で36%に及び、これは2・8人に1人の高い割合になります。

午前中に購買のない顧客を無視することはできない?

2.8人に1人という数字だけを見ると、大いに問題視されるべき実態だと思われますが、曜日別に見た際と同様に、年に数回しかない顧客を除いた実績を見る必要があります。
その結果を図表⑤で確認すると、折れ線グラフで表された午前中の購買が一切ない顧客の割合は、男女共におよそ1割まで下がります。

図表⑤時間帯別に購買が無い顧客の割合 性年代別(年間の家計支出の3分の2の顧客対象)

この実態であれば、曜日別と同様に問題視するほどのものではないと見るべきでしょうか。
もし、今が人口増に伴い、商圏内の人口も増加の一途の時代なら、あまり気にしなくてもいい値と言えたかもしれません。しかし人口減が続く中、1人でも多くの既存顧客を維持していくことが生き残りの条件とも言える時代には、10人に1人の顧客が不満を持つ可能性を示唆する1割という値は、決して無視できるものではないはずです。

 

なぜ二刀流の価格戦略に取り組むのか

夕方からのタイムバーゲンを実施する店が一定数存在するのは、顧客の来店時間に配慮してのことでしょう。その場合でも、男性で5%、女性で6%程度は12時~17時までしか購買実績がない顧客が存在するので、EDLPに徹しない限り、完全に平等というわけにはいきません。
そこは割り切って月間通してのお買い得商品などのEDLPと、チラシやタイムバーゲンなど、2つの価格戦略のいわば二刀流が、業界の主流となっていることもうなずけます。

以前ブログで紹介した顧客の行動を制約している「距離軸」、「時間軸」、「生活軸」、「ディスとネーション軸」の4つの軸は店の努力で変化させることができないものです。
その中の勤務地への動線や生活上の関係性などを含む「生活軸」が、今回の来店できない曜日、時間帯を生む主な要因となるため、解消することは難しいものの、不平等感を少しでも低減させるため、前述した二刀流にならざるを得ないと考えられます。

では、最後の一つである部門別の”ない”はどう評価すべきでしょうか。次回は部門別の数値を見ていきます。

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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。

出典:食品商業2024年8月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第40回」

データアナリスト紹介
清原和明
1981年ダイエー入社。95年西明石店店長、98年九州SM営業本部北福岡ゾーンマネジャー、99年九州SM営業本部エリアマネジャー、2001年営業企画本部FSP推進部長、05年近畿販売本部営業部長に就任。08年消費経済研究所に出向し、常務取締役マーケティング担当就任。その後、ダイエー関東営業本部営業部長を経て、12年データコム分析推進室室長就任
掲載情報
こちらの記事は、食品商業8月号に掲載されています。
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