捨てずに価値を加え 新たな商品に再生する非可食部の有効活用【ヨーロッパに学ぶ新たな食トレンド】
地球温暖化をはじめとする環境問題への配慮や、健康への意識向上などの背景から、世界の食トレンドは大きく様変わりしています。本稿では、今年10月にドイツで開催された国際食品見本市「Anuga(アヌガ)」で話題となった、ヨーロッパの食トレンドについて、データコム株式会社取締役経営推進部部長の小野寺裕貴が解説します。
捨てずに価値を加え、新たな商品に再生する
―前回は、アヌガで話題にあがったヨーロッパにおける食トレンドとして、代替乳製品、代替肉+魚、成分・産地の透明化の三つについてご説明いただきました。今回のテーマは。
今回は、非可食部の有効活用、スーパーフード、脱プラスチックについて、ご紹介したいと思います。
まずは非可食部の有効活用について。本来捨てられるものに対して価値を付加し、全く新しいものに変えることを「アップサイクル」といいます。バナナを例に上げると、これまでは熟し過ぎた果肉をジュースにし、皮は捨てるという活用だったものを、皮をスナックに変えるといった発想です。
―なぜ今、アップサイクルに注目が集まっているのでしょうか。
食品ロスの約半数が農場、つまり収穫段階で発生していることが分かっています。
出典:https://wwfint.awsassets.panda.org/downloads/driven_to_waste_summary.pdf
また、食品ロスのうち63%は先進国で発生しているというデータがあります。そうした背景から、食品ロスへの意識が高まっているといえるでしょう。
先進国でいえば、アメリカや日本、ヨーロッパは外食で残ったものを持ち帰る率が低い傾向にあります。日本では衛生面での懸念から持ち帰りが敬遠されていますよね。アメリカでもヨーロッパでも、食べ残しを持ち帰るという文化は根づいていません。
サーキュラーエコノミー(資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値を最大化することを目指す社会経済システム)の世界市場規模でいうと、再生可能エネルギーやバイオ燃料といった「無駄になっている資源の代替」が最も多く、約200兆円規模。対して、アップサイクルやリサイクルなどに該当する「捨てられている素材価値の回収」は約156兆円と、まだまだ伸びしろがある市場といえそうです。
―実際に、アップサイクルの事例を教えてください。
先程例で挙げた、熟したバナナをピューレ上にして乾燥させたフレークが出展されていました。ポイントは皮に付着した農薬の除去。独自のスチーム殺菌により、安全性も担保しています。
また、加工の過程で廃棄される果物の殻などを利用した、ヨーグルトやミルクもあります。殻をしぼって出るミルクをヨーグルトやミルクに混ぜるため、動物性ミルクを一切使用しないプラントベース商品になります。
他にも、トルティーヤを丸く成形する際に出る切れ端から作られたビールもあります。
これは年間10t以上を製造するトルティーヤメーカーが、ドイツの醸造所とともに開発したビールです。
発酵したピクルスの汁をソーダとして蘇らせたソーダドリンクや、おからで作られた韓国の伝統菓子「薬菓(ヤックァ)」など、趣向を凝らした商品が発表されていました。
―日本では昔から“もったいない”精神があると思いますが、ヨーロッパでもそういう意識が高まっているのでしょうか。
どちらかというと、日本は「もったいないから捨てない」という抑制の部分が強いと思っています。一方でヨーロッパは、「何を食べて廃棄を減らすか」という奨励や促進の発想が強い。また、ヨーロッパの人々は「アップサイクル商品を買っている私」というブランディングの意識が強い傾向にあるため、アップサイクルへの関心が高まっているのでしょう。
―日本でもアップサイクルの関心が高まっていますね。
そうですね。僕が独自に調査した「日本経済新聞」に掲載されたアップサイクルとサーキュラーエコノミーに関する記事件数は、ここ5年で20倍にも増えています。
注釈:日本経済新聞の記事検索で「サーキュラーエコノミー」、「アップサイクル」を検索した際のヒット件数(23年12月18日現在)
データには含んでいませんが人事の記事が多く、まずはサーキュラーエコノミー関連の部署をつくり、社内で取り組んでいこうという流れを感じます。
―実際に、日本でのアップサイクル事例はありますか。
ラーメンチェーンの「一風堂」が、土産用のラーメンの端材を用いたビールを、23年にリリースしています。また「Boulanferme(ブーランフェルメ)」というパンメーカーが、パンの耳を活用したビールを発売しています。
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