「リテールメディアの現在地」Z世代を中心に浸透する新たな消費スタイルVOL.2
今回は、今後の消費を支えるZ世代(1990年代後半〜2010年生まれ)の消費スタイルについて紹介します。
主に、サブスクリプション、コト消費、エシカル消費の三つに分け、アメリカの事例を交えつつ、
弊社 取締役 経営推進部部長の小野寺裕貴に話を聞きました。
本ブログは続編となりますので、VOL.1の記事を閲覧前の方は下記バナーをクリックしてご覧ください。
商品との出会いへの回帰で出現した”モノを売らない店”
ーリテールテインメントの重視を挙げられましたが、実店舗が果たす役割はどう変化しているのでしょうか
小野寺:実店舗が果たす役割として、商品との遭遇、商品購入、
商品受け取り、体験の四つを示しました(図表4)。
旧来の実店舗は、その場で商品を手に取り試して購入するという役割が主でしたが、
O2Oが浸透してからは、実店舗の役割がウェブへと移行しました。
そしてコロナ禍では、よりウェブでの商品検索、購入が主流となり、
受け取り時に実店舗を活用する流れが一般化しています。
そして今、単にモノを買う消費からコト消費へ移行しているという背景から、
実店舗で商品を受け取りながら体験したいというニーズが高まっています。
商品との遭遇への回帰が進んでいるといえるでしょう。
ー実店舗でモノを売らない店というのは、具体的には
小野寺:代表的なブランドは、ニューヨーク発の「SHOWFIELDS(ショーフィールズ)」です。
18年に創業したD2Cブランド向けのRaaS※3型小売で、現在5店を運営しています。
22年にオープンしたニューヨーク店では、各ブランドの商品を、
キッチンやダイニングといった生活シーンに応じたレイアウトで展示するのが特徴(図表5)。
商品をただ陳列するのではなく、ライフスタイルに合わせた使い方を提案しているのです。
また、試食や商品体験ワークショップの開催により、一層インタラクティブな提案を行っています。
商品の購入はQRコードを読み取り、ECへ遷移。
店舗では商品の展示を行うだけとなっています。
※3 RaaS:Retail as a Service。小売りのサービス化を指す。
ーウェブでは分からない商品の特徴を、実際に見ることが出来るということですね
こうした提案は、購買につながりやすいのでしょうか
小野寺:買うという行為がないため、スタッフ側からの "押し売り感" がないというのは一つの特徴だと思います。
買うことを目的とするよりも、エンターテインメント性を求めて来店し、
気に入ったら買うという流れになってきていると思いますね。
また大手百貨店「NORDSTROM(ノードストローム)」は、「NORDSTROMLOCAL」という、
商品受け取り・返却、試着、お直しのサービスに特化した店を出店しています。
出店エリアは住宅街で、生活動線上にあることで、顧客との接点づくりを重視した店舗となっています。
物販を行わないため、在庫管理や品出し作業がなく、スタッフは接客に専念できるメリットもあります。
ーその他の事例も教えてください
小野寺:体験に重きを置く玩具店「CAMP」では、森の中をイメージした空間や、
子どもが遊べる遊具などを設置しています(図表6)。
また、イベントスペースでは子ども向けの催しが定期的に行われており、その参加費が収入源となっています。
人形玩具チェーンの「AmericanGirl」は、人種や容姿など多種多様な人形を取り扱うブランド。
人形とセットで売られている書籍には、人形の生い立ちや家族の話などが記されており、
各人種や国の歴史を学ぶことができるようになっています。
実店舗では、人形のヘアセットができるサロンや、修繕をするホスピタルなどもあり、
人形とともに体験する場の提案を行っています。
購買に強い影響を与えるエシカル消費とは
ー最後のエシカル消費へのシフトですが、アメリカはエシカル消費が一般化してきているのでしょうか
小野寺:ある調査※4によると、アメリカではエシカル消費の認知が67%に達し、
それが購買にも強い影響を与えていることが分かっています。
一方で日本では言葉や意味を知らない人が54%と半数もおり、まだまだ認知が低い状況といえるでしょう。
そもそもエシカル消費とは、地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動を意味します。
例えば、環境への配慮ではエコマーク表示や有機農産物、シェアリングなどがあり、
社会への配慮では障害者が作った商品、フェアトレード商品、
また地域への配慮では地産地消、応援消費などが挙げられます(図表7)。
アメリカのSM各社では、持続可能なモデル や FLOHN(Fresh、Local、
Organic,Healthy,Natural)を意識した品揃えなどが進んでいます。
例えば、「WHOLE FOODS(ホールフーズ)」は、店舗屋上に屋内農園を併設し、
そこで栽培した作物を販売しています。
また、各社、生鮮日配を中心にオーガニックが根付いており、地元生産の商品などの扱いが増えています。
※4 調査:アスマーク「日本・アメリカ・中国のSDGsに関する意識比較調査」(2022)
ーエシカル消費に取り組むのは、SMが多いのでしょうか
小野寺:アパレルブランドも各社意欲的に取り組んでいますね。
「Marine Layer(マリンレイヤー)」では、拠点であるサンフランシスコで生産されたローカルな素材を使用する他、
不要になったTシャツを持ち込むと、1枚5ドルのディスカウントを受けられるようにしています。
また「EVERLANE(エバーレーン)」は、素材のみならず、工場や物流などの労働環境にも配慮。
無理のない持続可能な製造を意識しています。
さらに、ECサイト上には、製品別に素材費、人件費、輸送費など、
どこにどれだけのコストがかかっているかを開示(図表8)。
これにより、労働者にきちんと対価を払っているかなどが分かるようになっています。
今後、日本でもエシカル消費への興味関心は広がると思いますので、
先進国での事例は役立つと思いますね。
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
慶応義塾大学大学院卒。株式会社みずほ銀行での法人営業、
株式会社インテージでの事業開発・アライアンスを経て、データコムへ入社。
前職時より米国等のリテールトレンドの探求、発信を行っている。
こちらの記事は、販売革新11月号に掲載されています。
※外部サイト(Fujisan.co.jp)に遷移します。
本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「販売革新」にて弊社経営推進部の小野寺裕貴が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:販売革新2023年11月号
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