お客様の想いに応える最適な品揃えとは?

実店舗を持つ小売業において、限りある売場の中で顧客のニーズを満たす品揃えを実現することは、様々なデータを集約可能となった現在でも大変困難な作業です。

その一方、生活者目線では、例えば食料品が欲しいときは、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントストアなど、多様な店舗・業態の中から何らかの意思をもって店舗や購買商品を選定しています。小売業の皆さんは、生活者1人1人がどのようなライフスタイルを送りたいのか、その店舗を愛する理由は何なのか、購買データや会員データ等の形で多くのフィードバックを受け取っています。

そこで今回は、「お客様の想いに応える最適な品揃え」をテーマに、過去にご紹介したいくつかのデータ分析手法を駆使しながら、顧客体験の向上をより精度高く進めるための方法をご紹介します。

店舗の顧客傾向について

品揃えを売れるものにするためには、各店舗の顧客の傾向をきちんと理解することが肝心です。
スーパーマーケットと一口に言っても、駅前の忙しい立地にあるもの、住宅街の中にひっそりと佇むものなど、その立地や会員比率、どれくらいの頻度でお客様が来店するかによって、全く異なる顔を持ちます。
以下に示す散布図は、これらの要素を踏まえて、店舗をいくつかのグループに分けてみたものです。

来店回数と会員比率による店舗のグルーピング

散布図で右上に位置する店舗は、会員比率も来店頻度も高く、顧客にしっかりと根付いている証拠です。こうした店舗は、さらに会員を増やすことで売上を上げるチャンスがあります。

一方で、来店はするけれど会員登録はしていない、または会員は多いけれど来店頻度が低いという店舗は、それぞれが抱える課題に応じた品揃えの見直しが求められます。特に、会員比率は高いけれど来店頻度が低い店舗は、特売日やイベント時には活気づくものの、競合店と使い分けをしている顧客が多いかもしれません。こうした店舗では、日常的なお買い物にも寄ってもらえるような品揃えを目指す必要があります。

来店頻度は高いが会員比率が低い店舗は、通勤や通学の途中で気軽に立ち寄れる駅前などの好立地にある場合が多いでしょう。ここでは、お客様に会員登録を促すことで、固定客を増やす取り組みが重要です。そして、会員比率も来店頻度も低い店舗は、何よりもまず足を運んでもらうこと、そしてリピーターになってもらうことを目指した品揃えや販促活動が求められます。

このようにして、顧客の来店行動を軸に大まかにグルーピングした後、店舗ごとに異なる商圏情報を考慮して顧客の傾向を把握することで、店舗の現状を多角的に捉えることが可能となります。それに応じた品揃えにすることで、顧客満足度を高め、売上を伸ばすことが可能になります。

商品改廃について

商品の改廃は、商品ラインナップを常に顧客のニーズに合わせて最適化し続ける、重要なプロセスです。このプロセスは、不要な在庫を削減し、売れ筋商品により多くのスペースを割くことで、顧客満足度の向上と利益率の最大化に直接貢献します。

一般に利用されるABC分析では、商品を売上構成比に基づきランク付けし、特に売れ行きの悪いCランク商品を改廃の候補とします。更に進んだ分析手法として、市場全体の売上構成比と自社のデータを比較し、両方でCランクに分類される商品を特定します。市場と自社で売上構成比がCランクの商品は改廃対象になり得るでしょう。

しかし、ID-POSの観点からデータをみると、市場および自社でCランクであっても、特定の優良顧客によって頻繁に購入されている商品が見えてきます。これらの商品を安易に改廃してしまうと、その顧客層を失ってしまう可能性があるため、商品改廃の際には売上構成比だけではなく、ID-POSデータを活用した顧客の購買行動を細かく分析することが求められます。

各商品の売上金額ABCと会員ランク構成比

バスケット分析について

バスケット分析を通じて、顧客が一緒に購入する傾向にある商品の組み合わせを把握し、これらの商品を店舗内で物理的に近い位置に配置することで、顧客の非計画購買を促進することができます。さらに、期間併売分析では、特定の期間内に顧客がどの商品を購入しているかを分析することで、顧客の購買傾向をより詳細に把握し、顧客の関心を引く商品を効果的に前面に出すことが可能です。
これらの分析によって、顧客の期待を超える品揃えを実現し、店舗への来店頻度の増加や、平均購買金額の向上を実現します。

粗利と販売数量の関係

品揃えにおいて、商品ごとの粗利と販売数量のバランスを適切に管理することは、小売業者が直面する最も難しい課題の一つです。売価が低くても大量に売れる商品と、売価は高いが販売数量が少ない商品の間で、どちらを店舗の貴重なスペースに割り当てるかは、慎重な判断を要します。

例えば、売価80円で粗利20円の商品Aは売れ行きが良い一方で、売価100円で粗利30円の商品Bはあまり売れないとします。一見すると、商品Aの方が人気があるように見えますが、粗利を重視すると、同じ数量を販売した場合、商品Bの方が全体の利益により大きく貢献します。

このように、単純な売上高だけでなく、商品ごとの粗利も考慮に入れることで、品揃えの戦略をより洗練させることが可能になります。粗利に基づいた分析を行うことで、どの商品を販促するか、または棚のどの位置に配置するかなど、より利益を生み出す品揃えを実現できます。

まとめ

今回は「店舗」という大きなくくりで、顧客のニーズに寄り添った品揃えをテーマとしました。
実際の活用においては、競合他社と明確な差別化を図る「生鮮4品」における品揃え戦略、グロサリーのような競合他社と同じ商品を扱う部門では価格戦略など、異なる目的・課題感に対して、より深堀りした分析を行っていくこととなります。
それらのテーマについては、また別の機会にご紹介していきます。

顧客分析システム「Customer Journal」のご紹介

品揃え最適化には、効率的なデータ分析ツールが必須です。「Customer Journal」はスーパーマーケットの品揃えを考える上で不可欠なABC分析やバスケット分析、期間併売分析を行うことができるツールです。その他にも、エリアデータを用いた商圏分析やトライアルリピート分析も可能で、これらの分析を通じて、売れる品揃えをデータに基づいて導き出すことができます。

執筆者紹介

事業推進部 栄利康太

山形大学人文社会科学部卒 2023年に新卒入社。
大学時代は会計学を専攻。
現在は事業推進部でサービス企画を担当。
データ分析を活用して、小売業の発展に貢献するために頑張ります!

監修者紹介
カスタマーサクセス室 室長 能藤直輝
旧富士ゼロックス株式会社でのCS、株式会社セガでの経営管理や新規事業開発、その後戦略コンサルタントを経てデータコムに入社。
現職ではカスタマーサクセス室を立ち上げ。クライアントに対してデータ分析支援や人材育成支援を行うなど、各社の事業成長に伴走。