スーパーフードと脱プラスチック【ヨーロッパに学ぶ新たな食トレンド】

地球温暖化をはじめとする環境問題への配慮や、健康への意識向上などの背景から、世界の食トレンドは大きく様変わりしている。本稿では、今年10月にドイツで開催された国際食品見本市「Anuga(アヌガ)」で話題となった、ヨーロッパの食トレンドについて、データコム株式会社取締役経営推進部部長の小野寺裕貴が解説します。

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捨てずに価値を加え 新たな商品に再生する非可食部の有効活用【ヨーロッパに学ぶ新たな食トレンド】

EUの中でもドイツが、スーパーフードの関心を伸ばす

―次に、スーパーフードについて。そもそもスーパーフードとは、どういった食品を指すのでしょうか。

スーパーフードとは、栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高いものや、ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品のことをいいます。

 

出典:https://www.lpollockpr.com/health-nutrition-trends/

 

世界のスーパーフード市場規模は、23年で1655億2000万ドル。28年には2695億ドルと、1.6倍まで伸長すると予測されています。地域別で見ると、アメリカやヨーロッパのが市場が大きいことが分かります。

 

出典:https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/superfoods-market

 

―特に市場が伸びているエリアはありますか。

国別でいえば、アメリカが19%と最も高く、次いでドイツが9%となっています。これは以前のデータから比べて2〜3%増と、スーパーフード消費のシェアを伸ばしています。メーカー側もスーパーフード関連の商品を増やしてきているため、市場が盛り上がっているようです。

ドイツ人の傾向としては、30%の人が植物の種や古代穀物を用いた菓子やパンに興味を示し、32%の人がスーパーフードであるキヌアの喫食経験があります。特に25〜34歳のスコアが最も高く、46%の人がスーパーフードに興味を示しているそうです。

 

―スーパーフード関連商品には、どういったものがありますか。

例えば、豆類などが豊富に含まれたスープを一週間詰めたボックス。これを飲むだけで、健康維持に役立つとうたった商品です。

ナツメヤシの実(デーツ)を使って、砂糖同等の甘味を実現した、砂糖の代替品(甘味料)もありました。これを開発したのが、糖尿病に悩まされた夫婦というストーリーもユニーク。デーツは食物繊維、マグネシウムなどが多く含まれるため、摂取することで健康効果も期待できます。

チアシードをタピオカの代替とした「Notタピオカミルクティー」というのも、ヘルシーな商品です。

 

 

チアシードは食物繊維やタンパク質など、栄養価が非常に高い上、独特のプチプチ食感も楽しめます。

 

ペットボトル回収や量り売りが定着

―最後に、脱プラスチックについて教えてください。

ヨーロッパでは、プラスチック消費の削減に積極的に取り組んでおり、世界での消費シェアも減少しています。下記画像を見ると分かりますが、ヨーロッパのシェアを18年と23年で比べると、4ポイントも減少。対して、中国やその他アジアが2〜3ポイント増加しています。

 

ヨーロッパでは、特定の使い捨てプラスチック製品と、オキソ分解性プラスチック製の全製品の使用が禁止されています。つまり、カトラリーやストロー、綿棒の軸などを紙や木で代替しているのです。

実際にヨーロッパにおけるペットボトル回収率は、21年で65%。今後、25年に77%、29年に90%を目標に掲げ、国を上げて取り組んでいます。

こうした脱プラスチックによって、廃棄物発生量の削減、循環型経済への移行、持続可能な代替手段の技術革新や普及の三つを目指していくようです。

 

―ペットボトルの回収率を増やすということですが、現在どういった回収方法を行っているのでしょう。

スーパーマーケット(SM)では、ペットボトルの回収率を上げるためデポジットが導入されています。500mlのコカ・コーラの場合、デポジットは0.25ユーロ。デポジット対象商品である印がラベルに印字されている他、価格札やレジでもデポジットを分けて表記しています。

また、SM各店に回収用の機器が設置されており、回収に出せばそのSMで利用できるクーポンが発行されます。

ただ、私が現地を見て感じたのは、単に回収機に入れるだけのため、おもしろさを出す必要がある点。単調な機械では、いずれ回収機にわざわざ出すのが面倒になるでしょう。

 

―その他に、脱プラスチックの取り組みはありますか。

ヨーロッパ大手のSMチェーン「LIDL(リドル)」では、洗剤のリフィルステーションを始めています。

出典:METRO(https://metro-co-uk.cdn.ampproject.org/c/s/metro.co.uk/2022/05/03/lidl-becomes-first-supermarket-to-trial-detergent-refill-machine-to-reduce-plastic-16577126/amp/

 

洗剤の量り売りによって、1店舗当たり年間2970本のプラスチックボトルが削減できると見込んでいるようです。

こうした食料廃棄とプラスチック消費を防ぐべく、ヨーロッパのSMでは量り売りコーナーが多い傾向にありました。食品でいえば、ナッツやコーヒー、ビネガーの販売が多かったですね。

あとは、これまでラミネート加工されていたコーヒーカップを、水性コーティングにより100%紙で作ったコーヒーカップや、100%堆肥化が可能なカプセルで作ったコーヒーメーカーなどが発表されていました。

 

―先程、アジアでの脱プラスチックが進んでいないとのことでしたが、実際は。

アジア各国は他国から安価な廃プラスチックを輸入してきた背景があり、プラスチックの排出量が多いことは周知の事実かと思います。しかし、ここ数年で各国が規制・禁止に乗り出しています。例えば、17年には中国で廃プラスチックの輸入禁止を発表し、18年にはタイとベトナムが輸入制限を、マレーシアが実質的な輸入禁止を決定しています。タイでも25年から輸入禁止を行うと発表し、23年には輸入の大幅削減を開始しています。

タイの商業施設では、ペットボトルリサクルマシンを設置。ただ、回収対象のボトルが限られていることと、ポイント制であることなどから、活用は進んでいない様子でした。また、タイでもリフィルステーションを設置するSMもあり、これは日用雑貨メーカーが仕掛けているようです。こうしたリフィルステーションは、多くのSMで見かけました。

日本でもリフィルステーションを置くコンビニやSMもあるので、今後増えていくのではないでしょうか。

 

 

執筆者紹介
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
慶応義塾大学大学院卒。株式会社みずほ銀行での法人営業、
株式会社インテージでの事業開発・アライアンスを経て、データコムへ入社。
前職時より米国等のリテールトレンドの探求、発信を行っている。
掲載情報
こちらの記事は、販売革新3月号に掲載されています。
※外部サイト(Fujisan.co.jp)に遷移します。本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「販売革新」にて弊社経営推進部の小野寺裕貴が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。 出典:販売革新2023年12月号
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