ヨーロッパに学ぶ新たな食トレンド「代替製品」について【後編】

地球温暖化をはじめとする環境問題への配慮や、健康への意識向上などの背景から、世界の食トレンドは大きく様変わりしている。

今回は、今年10月にドイツで開催された国際食品見本市「Anuga(アヌガ)」で話題となった、

ヨーロッパの食トレンドについて、データコム株式会社取締役経営推進部部長の小野寺裕貴が語ります。

 

この記事は後編です。前編を読んでいない方は下記をクリックください。

ヨーロッパに学ぶ新たな食トレンド「代替製品」について【前編】

 

代替肉は大手スーパーマーケットや飲食店との提携で拡大している

―次に代替肉に関して、教えてください。

代替肉の国別認知度を見ると、ドイツは75%が「知っている(よく知っている、知っている計)」であるのに対し、

日本での認知度は50%にとどまっています。

ドイツでは、植物由来のソーセージの喫食経験者割合が48%と高い傾向にあります。

対して、ベジタリアンやビーガンの人口比率は、ドイツで10%と決して高くはありません。

そうした中でも代替肉を選択する人は、健康面などを配慮しているといえるでしょう。

 

アヌガで登壇した「Beyond Meat(ビヨンドミート)」のCEOは「代替肉への移行が今後の地球にとって極めて重要であることを感じてほしい」と熱弁していました。

また「代替肉は温室効果ガス排出、土地の使用、水の使用が90%削減され、温室効果ガスの削減により1.5℃の温暖化を抑制する」と発表していました。

 

また、ヨーロッパではビヨンドミートの代替肉を使ったハンバーガーとナゲットを、

「マクドナルド」が20年に「Mc Plant(マックプラント)」ブランドで販売しています

 

しかし、ヨーロッパでのテスト販売を経て、21年にアメリカでも販売がスタートしましたが、売れ行きが悪く今は販売を停止しています。

マックプラントのハンバーガーを食べましたが、やはり家畜肉と比べると味が薄く淡白な印象です。

パサパサしており、噛む度にパテが崩壊し食べにくいのも気になりました。こうした淡白さをごまかすために、ソースは濃いめの味付けになっていましたね。

 

―代替肉メーカーは、飲食企業と組むケースが多いのでしょうか。

「バーガーキング」と組んでいるのが、「The Vegetarian Butcher(ベジタリアンブッチャー)」です。

ちなみにここの創業者は、家畜農家出身で家畜農家に入ったものの、屠殺への抵抗を拭えず代替肉の開発に着手したという経歴の持ち主です。

バーガーキングイギリスのCEOは「今後プラントベースのメニューを追加し、置き換えることで、10年以内に動物性メニューが半減する可能性がある」と言及しています。

 

―消費者が代替肉を口にする機会が多いというのも、ヨーロッパの特徴ですね。

ドイツのSMでは、どこでも代替肉の取り扱いがありました。オーガニック系の「tegut(テグート)」や、

高級SM「HIT(ヒット)」などだと、棚5本前後が当たり前で、多いところだと6〜7本の棚を使って代替肉を取り扱っています

また、ディスカウントSMでも、最低限の代替肉製品を用意していました。

 

 

―代替魚も少しずつ増え始めているとか。

プラントベースの代替魚を製造する「Ordinary Seafood(オーディナリー シーフード)」は、

サーモンやツナなどを開発しています。ここのサーモンは大手SM「METRO(メトロ)」と共同製造モデルを開発し、ドイツとヨーロッパでの急速な拡大を目指しています。

代替製品を浸透させるためには、パートナーとの連携が必須です

 

 

代替製品の開発を牽引するのはベンチャー企業のため、食文化の拡大のためには大手飲食店やSMと組み、消費者へアピールする場をつくることが肝要でしょう。

また、実際に食べてみてもやはり味、食感ではまだまだ家畜肉に劣るため、食したときに「おいしい」と感じるようなものでないと長続きはしません。

さらに、価格面でのネックもあります。通常商品と同等の価格にするか、もしくは企業の考えを正しく理解してもらい、多少高くても買ってもらうための説明が重要といえるでしょう。

 

透明化の過程ではグリーンウォッシングに注意

―最後に、成分・産地の透明化について教えてください。

消費者が商品を購入する際に気にすることは、どこで作られているか、どんなプロセスで作られているか、社会・環境にどんな影響を与えているかということです。

さらに、企業へ「今後、新商品で訴求する予定のサステナビリティ要素」を聞くと

「CO2排出の少ない生産を行う」「サステナブルなパッケージを用いる」が多く回答されました

 

 

CO2排出の抑制や、脱プラスチックといったパッケージへの配慮に、関心が高まっているようです。

インドの兄弟が創業した食品メーカー「Two Brothers(トゥー・ブラザーズ)」は、インドの農村部で土壌改良に尽力しながら生産を行っています。

これにより、農村部の雇用創出や収益向上に貢献。ECでは個別商品ごとに製造工程や、健康面でのメリットをしっかりアピールし、購買意欲を喚起しています。

 

―情報の開示が購買につながるというわけですね。

そうですね。サステナブルの観点からも、クリーンラベル(透明化)への注目度は、今後も高まっていくと思います。

コーヒー嫌いの若者が立ち上げた「Koawach」は、ガラナ由来のカフェインを混ぜた新しいココアを開発しています。

特徴的な商品ですが、ホームページやパッケージでフェアトレードやビーガン対応に関する情報、

グルテンフリーのためアレルギーがある人でも摂取可能であることなどを明記しています。

環境配慮だけでなく安全性の訴求も、買ってもらえる要因につながるでしょう。

透明化が進む一方で、「Green-washing(グリーンウォッシング)」というのにも注意しなければなりません。

 

―グリーンウォッシングとは。

環境に配慮した、エコなイメージを思わせる「グリーン」と、ごまかしや上辺だけという意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語です。

例えば「コカコーラ」が緑色のラベルで出した新商品は、従来より砂糖の量を減らしただけでヘルシーではなかったり、

ストロー不要のふたを開発した「スターバックスコーヒー」は、脱プラのつもりが、ふたの分だけプラスチック商品が増えていたりといったことです。

隠されたトレードオフや、根拠を示さずサステナブルを主張するなど、グリーンウォッシングに陥らないために、透明化を行う際には十分気をつけなければならないのです。

 

 

 

執筆者紹介
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
慶応義塾大学大学院卒。株式会社みずほ銀行での法人営業、
株式会社インテージでの事業開発・アライアンスを経て、データコムへ入社。
前職時より米国等のリテールトレンドの探求、発信を行っている。
掲載情報
こちらの記事は、販売革新2月号に掲載されています。
※外部サイト(Fujisan.co.jp)に遷移します。本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「販売革新」にて弊社経営推進部の小野寺裕貴が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。 出典:販売革新2023年12月号
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