購入・掲載の簡素化とデータ活用が両立した状態を目指すことの大切さ
今回のテーマは「購買の自動化・簡素化」。日本の小売業で起きている購買に関する課題を前提に、アメリカをはじめとする海外では購買がどう進化しているのか。
事例を交えて、データコム株式会社 取締役経営推進部部長の小野寺裕貴が語りました。
この記事は後編です。前編を読んでいない方は下記をクリックください。
ロボット、自動販売機も海外で導入が盛ん
購入・決済の簡素化が追求されているが、データは紐づいていない状態について、事例を交えて解説をお願いします。
インド人が開発した自動セルフレジ「Mashgin(マッシュジン)」が、コンビニや空港、スタジアムなどへの導入を加速しています。
これまでも会計時に一つずつバーコードを読み取らずとも、商品を置くと自動認識し決済に進むというシステムはありましたが、
認識する商品が限られていたため、SKUの少ない店に限られていました。
マッシュジンは、認識できる商品数を1万SKUまで拡大しているため、コンビニでの導入もできるようになっています。
実際に体験したところ、通常の決済より8〜10倍は早くなると感じましたね。
無人の体験型でいえば、2017年にアメリカでスタートした無人カフェ「Cafe X」。
店頭のタブレットで注文、決済をすると、ロボットがカフェラテなどを作ってくれます。2分程度ロボットが作業するため、待ち時間も楽しめます。
同じような店舗では、イタリアの「TIPSY ROBOT(ティプシー ロボット)」。ここはロボットがカクテルを作ってくれるロボットバーです。
―ロボットの実用が盛んなのですね。
調理ロボットの他、配送ロボットも実用化されていました。14年に創業したStarship Technologies(スターシップテクノロジーズ)社は、大学構内の店舗でオーダーした商品を届けてくれる自動配送ロボットを開発しています。
アプリで注文すると、ロボットが利用者のいるところまで届けてくれます。
ロボットにはカメラやセンサーなどが搭載されており、障害物などを自動検知しながら走行します。利用者の近くに止まり、アプリでロックを解除して商品を受け取る仕組みです。
実用は大学構内のみで、一般道路での活用はまだ先でしょう。
―自動販売機も、海外で増えてきているのでしょうか。
アメリカでも自動販売機は増えてきています。例えば、日本でも導入がスタートした「YO-KAI Express」。
24時間いつでもラーメンを提供する自動販売機で、メニューによって調理方法も変更ができます。
オンラインに接続されており、売上データの取得ができる他、いずれはダイナミックプライシングにも対応するようです。
05年に創業した「Sprinkle Cupcake(スプリンクルズカップケーキ)」は、朝に焼いたケップケーキをトラックで自動販売機に配送し、いつでもカップケーキが手軽に購入できると人気です。
―その他の事例はありますか。
ナビゲーションも、進化した技術といえます。Amazon Freshでは、店内のデバイスに話しかけると、
商品の陳列箇所などをガイドしてくれます。AI音声認識の「アレクサ」を活用したサービスです。
またアメリカの薬局・コンビニチェーンの「CVS Pharmacy(ファーマシー)」は、店内にプライスチェッカーを設置していました。
陳列が乱れがちな、アメリカならではのツールですね。
現在ではある程度きれいに陳列する店舗も多いですが、依然としてプライスチェッカーは設置されており、クーポン発行なども兼ねていました。
購買の理想形を実現するアメリカの事例
―最後に、購入・掲載の簡素化とデータ活用が両立した状態について、教えてください。
アメリカの百貨店「Macy’s(メイシーズ)」では、個人のスタイリングをサポートするサービスを提供しています。
店頭に掲載されたQRコードを読み取ると、スタイリングの予約ができ、店頭やオンラインで、個人の好みに合わせた衣服やコスメをお薦めしてくれます。
また、ターゲットでは、バーチャルでコスメを試せるサービスを導入。
コスメコーナーの案内板にあるQRコードを読み取ると、オンラインストアへ遷移し、気になるコスメをVRで自分の顔に化粧品を重ね合わせて試せるという仕組みを採用しています。
このオンラインストアでは、サインインすればレコメンドもできるようになっています。
ターゲットではその他にも、オン/オフラインの両方で活用できるアプリを導入しています。
オンラインオーダーで利用しているアプリを店頭で使えば、ほしい商品のレビューや陳列箇所などの情報を得ることもできます。
―スマートカートも、「購入・掲載の簡素化とデータ活用が両立した状態」に該当するシステムかと思います。スマートカートは進化していますか。
「The Beyond Store.com(ザ・ビヨンドストア)」がリリースしたのが、既存のカートに取り付けることができるスマートカートデバイスです。
カートに依存することなく、デバイスを取り付けることができ、導入投資の抑制につながります。
デバイス上では通常のスマートカート同様、商品スキャン、商品レコメンド、決済が可能です。
「Instacart(インスタカート)」では、オンライン上で蓄積したデータに基づく、精度の高いレコメンド表示を可能にしています。
スマートカートアクティベート時にはログインが必要で、商品レコメンドはもちろん、デリカの事前オーダーにも対応していました。
これまで海外の事例を紹介しましたが、データ活用のみが進んだ状態と購入・決済の簡素化が追求されているが、データは紐づいていない状態を踏まえて、購買の手間がなく、データの連続性がある購入・掲載の簡素化とデータ活用が両立した状態を目指すことが、顧客体験および売上アップには重要だと思います。
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