「リテールメディアの展望」グローバル市場と日本の挑戦についてVOL.3
小売企業が保有する消費者の購買データを活用し、広告を効果的に配信する新たなビジネスモデル「リテールメディア」。コロナ禍でECといったオンラインビジネスが急速に発展したことで、リテールメディア市場も拡大しつつあります。
世界規模で見たとき、リテールメディアはどう活用されているのか。データコム株式会社 取締役経営推進部部長の小野寺裕貴にインタビューしました。
本ブログは続編となりますので、VOL.1/VOL.2の記事を閲覧前の方は下記よりご覧ください。
日本では顧客が継続して利用したくなる変革が急務
―これからの小売ビジネスはどう変化するのでしょうか
小野寺:従来型のビジネスモデルはB2C、対消費者でしたが、リテールメディアはB2B、対広告主が主流となってきます。扱う商品も実態のあるものから、複雑化したロジックへと変わり、薄利多売から高利益率商売へと変革しています。これに伴い、メーカー側のマーケティング手法も変わります。情報やマーケティングは、従来のようなマスへ向けたものではなく、パーソナライズ化された情報を個人に直接届けることができるようになっています。
一方、日本ではリテールメディアの領域はまだまだ発展途上のように思います。
現状、割引やクーポン、ポイント付与などで集客する「機能的価値の充足」段階にとどまっていると考えています。アメリカは、次のフェーズである「購買体験の心地よさ」まで満たしている。日本はまだ無人決済やサブスクリプション、即日配送といった部分が弱く、この部分を強化する必要があると思います。
そしてアメリカは次の段階として「○○の商品だから買おう」といった「企業への共感」に対するアプローチを推し進めています。企業への共感に取り組むことで、顧客とのつながりをより強めようとする傾向にあるのです。
アメリカと日本におけるリテールメディアの段階
―日本の小売業は、具体的にどういった変革が必要でしょうか
小野寺:紙カードからアプリへ移行したところまでは進んでいますが、その先がない企業が多く見受けられます。またオンラインストアもほとんど機能していません。結果、アプリが担う機能がポイントの蓄積とクーポン発行にとどまり、顧客が往来するスポットになっていません。
アメリカでは、店舗での購買時に顧客が求める情報や体験の一部をオンライン上で補足することで、オンライン接点を創出しています。一方で、自宅での購買では満たされないリアルな情報や体験は実店舗で充足を図るなど、物理的な接点も維持しているというわけです。日本でも、このオンラインと実店舗の相互補完に取り組むべきでしょう。
そしてその先に、オン/オフラインで一貫したブランドの世界観をつくり、顧客とのつながりを深めていくことが大切です。
アメリカにおけるリテールメディアの現状
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
慶応義塾大学大学院卒。株式会社みずほ銀行での法人営業、
株式会社インテージでの事業開発・アライアンスを経て、データコムへ入社。
前職時より米国等のリテールトレンドの探求、発信を行っている。
こちらの記事は、販売革新9月号に掲載されています。
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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「販売革新」にて弊社経営推進部の小野寺裕貴が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:販売革新2023年9月号
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