3分で読める! 「売上の因数分解」について
売上を上げることは小売業や飲食店の店長・マネージャーにとって最重要課題です。しかし、売上が伸び悩む原因を正確に特定せずに施策を打ってしまい、効果が得られないケースも少なくありません。そこで、売上の因数分解という手法を活用します。売上の構成要素を明確にすることで、具体的な改善ポイントを見つけられます。本記事では、因数分解の手法を解説し、現場での実践に役立つ方法を詳しくお伝えします。
売上の因数分解とは
売上の因数分解とは、売上を構成する複数の要素に分解し、それぞれの要素がどのように影響しているかを分析する手法です。単に全体的な売上の数字だけを見るのではなく、客数や客単価などの具体的な要素に分解することで、課題をピンポイントで見つけられるようになります。売上の増減要因が「取引数」なのか、「1人当たりの買上点数」なのか、「商品平均単価」なのかを具体的に特定することで、注力すべきところが判断しやすくなります。
売上の因数分解の公式
売上の因数分解は一般的に以下の計算式が使われます。
売上=レジ通過客数÷ 客単価(一品単価×買上点数)
売上は、一定期間内の取引の回数(レジ通過客数)と、1人当たりの平均購入金額(客単価)の掛け算で算出されます。この基本的な公式により、売上を構成する大枠の要素を把握できます。さらに、客単価を「1回の買い物で購入される商品の数(買上点数)」と「1品あたりの平均価格(一品単価)」に分解することで、売上の内訳をさらに細かく分析できます。これらの公式を基に、どの部分が課題なのかを特定しやすくなります。例えば、客数は増えているのに売上が上がらない場合、客単価が低下している可能性があります。逆に、客単価が高いのに売上が伸びない場合は、客数に課題があると言えます。
因数分解を現場にどう活かすか
スーパーマーケットにおける例
あるスーパーマーケットの今年の売上が前年比で-250,000円になったとします。売上減少の原因を因数分解で見ていくと、客数は変わらず、客単価が減少していることが分かりました。さらに、客単価を分解すると、1人当たりの買上点数が4点、一品単価が500円となっています。
この状況で客単価の改善を図る場合、減少した買上点数を増加させる、または一品単価を引き上げる方法が一例として考えられます。
例えば、買上点数を増やすための施策として同時購買商品の陳列強化などがあります。精肉コーナーに餃子の皮や麻婆豆腐の素などを陳列することで、同時購買の訴求をし、買上点数を増やす方法が考えられます。また、”2点目半額”や”まとめ買いで割引”などのキャンペーンを実施することで、顧客の購買意欲を高めることが期待されます。
一方で、一品単価を引き上げるためには、オリジナルの惣菜など付加価値の高い商品や季節限定の高価格帯商品を導入することが考えられます。商品の魅力を訴求するプロモーションを行うことで、高単価の商品を売り出し、客単価の向上が期待できます。
飲食店における例
飲食店でも考え方は同様です。売上の減少に対して、売上の因数分解を行うと、客数の減少が原因であるということが分かりました。新規顧客の取り込みは重要ですが、客数をすぐに伸ばすことは容易ではないので、まずは既存顧客の一品単価を引き上げる施策を検討してみます。
一品単価を900円に引き上げるための策としては、高価格帯のワインやクラフトビールの期間限定の提供などが考えられます。このように、細分化した数値を確認することで、具体的な改善の方向性を明確にすることができます。
当然、各業態やお店のコンセプトによって取るべき施策は変わってきます。しかし、具体的な施策を考える前提として、因数分解は原因を追究するのに有効です。
売上の因数分解を取り入れるためには
売上の因数分解を実践するためには、以下の準備が必要です。
データの収集
POSシステムや会計システムを活用して、日々の売上データを正確に収集します。特に、売上、客数、客単価、買上点数、一品単価など、因数分解に必要なデータを揃えることが重要です。
社内教育と共有
売上の因数分解の手法を社内全体で理解し、活用する文化を育むことが重要です。定期的に分析結果を共有し、部門ごとの具体的なアクションプランに落とし込むことで、組織全体での改善が促進されます。
まとめ
売上の因数分解は、経営改善の基本的な手法であり、どの業界でも活用可能な分析方法です。「売上=客数×客単価」や「客単価=買上点数×一品単価」という計算式を基に、売上の構成要素を明確に把握できます。具体的には、スーパーマーケットや飲食店での事例を示しましたが、他の業種でも同様に応用できます。この手法を活用することで、売上停滞の原因を特定し、適切な対策を講じることができます。
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