ポイントカード保持者のデータだけで分析する必要性
コロナウイルスの影響や値上げにより、スーパーマーケットではユニーク客数の減少が課題となっています。
人口減少や消費行動の変化も、この傾向を加速させています。一方で、多くの店舗では、ユニーク客数の減少にもかかわらず売上を維持することに成功しています。その背景には、来店頻度や購入金額を向上させる戦略があります。本記事では、この「売上維持の方程式」に焦点を当て、ユニーク客数の減少時にどのように売上をカバーするか、その鍵となる指標や具体策を解説します。また、分析の基盤となるポイントカード保持者のデータが持つ信頼性と有用性についても詳しく掘り下げていきます。
コロナウイルスの影響と値上げによるユニーク客数の減少
コロナウイルスの影響や値上げは、ユニーク客数が減ることを補うために、お客様一人当たりの金額を上げるよう促しています。
ユニーク客数が減る理由は、人口の減少による不可避な流れとして受け入れるしかありません。したがって、①1人当たりの購入点数、②同購入金額、③同購入回数(頻度)の3つの指標を改善する以外に、他の選択肢はありません。思い出していただきたいのは、コロナウイルスの流行後の状況です。その時に起こったことも、ユニーク客数の大幅な減少でした。人との接触を避ける傾向が強まる中、スーパーマーケットでの買い物頻度が減った人が増えました。しかし、驚いたことに多くの店舗では、ユニーク客数は減少しているにもかかわらず、売上は前年比で伸び続けていました。ユニーク客数の減少は、通常、売上を構成する2つの要素である来店回数と単価が同時に上昇することはまれであり、それがカバーされていたのです。短時間でまとめ買いをすることへの意識が高まる中、宅飲みや自炊、初めての料理やお菓子作りに挑戦するなど、材料や関連商品の購入が増えたことにより、来店回数と単価が上昇しました。
上記のような状況は、図表1に基づいて示された図表3の、コロナウイルス流行後の売上推移に現れています。
ユニーク客数の減少による売上の維持方程式
今回のケースとコロナウイルスのケースで共通しているのは、ユニーク客数の減少ですが、これからも常に前提となる条件だと言えます。ただし、これらの2つの事例は、主にコロナウイルスの影響やメーカーの値上げという特殊な状況によるものですが同時に、ユニーク客数が減少しても売上を維持できる方程式を提示しています。
その根底にあるのは購買範囲の広がりです。これは、部門、カテゴリー、サブカテゴリーなどで、今まで購買がなかった既存のお客様の中で新たな購買が生まれたことを示しています。しかし、今後はコロナウイルスやメーカーの値上げなどの特殊な状況に頼らずに、同様の方程式を構築する必要があります。そのハードルは高いですが、それが人口減の時代において最も重要な商売のカギとなるのです。
ポイントカード保持者の顧客データの信頼性と有用性
スーパーマーケットの顧客データは、ポイントカードを持っている人だけのデータです。ポイントカードを持っていない人のデータは含まれていません。そのため、信頼性に疑問を持つ人もいます。一方で、ポイントカードを持っている割合が高ければ高いほど、信頼性が高いと主張する人もいますし、全顧客の7割前後を目安にすれば十分だと考える人もいます。しかし、ポイントカードを持っていること自体が、一見客ではないことを意味しています。ということはつまり、一定の頻度で来店する可能性がとても高いのです。なぜならその店をあまり利用しない人が、わざわざポイントカードを作ることはありません。ポイントカード保持者の客単価と、一見客の客単価を比較しても、大きな差があることはよく知られています。図表④には、どの月でも、ポイントカード保持者の1人あたりの点数や単価が、おおよそ1.6倍高いことが示されています。
顧客データによる分析の意義
分析の目的やテーマによっては、年に数回しか来店しない顧客のデータを分析しても意味がないことも多く、頻度が明らかに低い顧客を除いて、ポイントカード保持者のデータを分析することも少なくありません。つまり、全顧客のデータがあっても結局はヘビーユーザーなどに絞り込む必要があるため、最初からポイントカード保持者だけのデータを使用して分析することとほとんど変わりません。したがって、ポイントカード保持者の顧客データだけしかないですが、分析する上で大きな問題にはならないのです。
顧客データ分析ソフト「Customer Journal」とは?
Customer Journalは、顧客の変化を「見える化」できるシステムです。
個店ごと・顧客ごとの購買状況を分析でき、購買金額の変化が分かります。
また、商品の支持年代層やリピート・同時購買といった購買傾向も分かるため、商品の特性を把握することもできます。
会員の住所情報と購買情報を組み合わせ、商圏の購買力の分析なども可能ですので、
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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:食品商業2024年9月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第41回」