顧客数の曖昧さがビジネスに与える影響とは?
ID付きPOSデータ(顧客データ)は近年、ますます重要になってきています。今回は最新のデータを紹介しながら、なぜID付きPOSデータが重要になってきているのか紐解いていきます。
まずは、顧客数とはなんでしょうか。なぜ今さら顧客数を確認する必要があるのか、不思議に思うかもしれません。
しかしデータ上では、顧客数は意外と曖昧なままになっています。そのような実態があるのは、通常小売店で言われる顧客数が、レジでの決済回数(レジ精算回数)を意味しているためです。
顧客数の曖昧さとその原因
図表①で解説しているように、本来の顧客数はユニーク客数(図表①の❸)に、その1人当たりの来店(購買)回数(❹)を掛けたものです。
ユニーク客数とは、個人として特定できる顧客のことを指し、その人が何度来店しても1人としてカウントされる顧客数です。
そのため同じ顧客数でも、同じ人が10回レジ精算していても、10人と数えるレジ精算回数としての顧客数とはまったく異なるものです。しかし、特定の個人を把握するためには、特定できる顧客データが必要です。
ユニークな顧客数とレジ精算回数の違い
かつては、POSデータしかなかった時代では、レジ精算回数を顧客数として把握するしかありませんでした。
今でも、POSデータのみを使用している小売店は多く、たとえば顧客数の前年比を見るときも、レジ精算回数の前年比を示していることが一般的です。少し前の時代なら、特に問題はありませんでした。しかし、現在は人口減少が加速しています。
ユニーク客数を把握できなければ、それを基準にした重要な指標も把握できず、ビジネスの運営に支障をきたすことになります。
重要な指標とは、図表①の❹❺を含む1人当たりの売上高を構成する要素です。チェーン店の総売上を例に考えてみると、いかに重要かが見えてきます。
顧客データの必要性と重要な指標
成長しているチェーン店を想像してみましょう。たとえ既存店の売上が前年よりも低かったとしても、新規出店による売上が追加されることで、チェーン店全体の売上は伸びるはずです。
しかし、もし新規出店が止まってしまった場合、既存店の売上も下がり、当然総売上も下がってしまいます。既存店の動向に注目せざるを得なくなります。
小売店でも同じことが言えます。新規のユニーク顧客が増えていれば、1人当たりの売上が下がっていても、店舗全体の売上は伸びるはずです。これはチェーン店における新規出店が既存店の売上をカバーしていることと同じです。
顧客1人当たりの売上が前年よりも下がっていることは、現状に対する警鐘と言えます。しかしながら売上が伸びている場合は、売上が全てを癒すと言われるように、1人当たりの顧客の状況まで注意が向かないものです。
しかし人口減少は、新規出店が止まったチェーンストアと同じような状況を店舗にもたらします。
人口減少と店舗の影響
店舗の場合、新規のユニーク顧客獲得の停滞がそれに当たります。
新規ユニーク顧客の獲得ができなくなって初めて、既存のユニーク顧客1人当たりの効率改善を取り組むことになります。しかし、新規のユニーク顧客についても、既存のユニーク顧客についても、顧客データがなければ検証することはできません。
顧客データがなければ、1人当たりの指標を見ることができません。(繰り返しにはなりますが、POSデータは、レシートごとの1回当たりの指標しか把握できません)。
1人当たりの指標は、ユニーク顧客の動向を表し、改善すべきことがあるかどうかを知るための重要な指標です。
そういった状況が把握できないということは、まるで羅針盤が十分に機能していない船でビジネスを運営せざるを得ない状態です。顧客データが今後より一層必要になる理由は、以上のような視点からです。
それを踏まえた上で、次回は1人当たりの指標から見た現状について述べていきます。
顧客データ分析ソフト「Customer Journal」とは?
Customer Journalは、顧客の変化を「見える化」できるシステムです。
個店ごと・顧客ごとの購買状況を分析でき、購買金額の変化が分かります。
また、商品の支持年代層やリピート・同時購買といった購買傾向も分かるため、商品の特性を把握することもできます。
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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:食品商業2024年9月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第41回」
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