SMの顧客における3つの”ない”に着目!特定の曜日に購買が無い顧客の影響は?

昔は、誰がいつ、いかなる時間に来店しても、同じお買い得商品が手にできるEDLP(EveryDay Low Price)がスーパーマーケットの売りでしたが、今では、EDLPを掲げるお店でも、ポイントカードやチラシ、タイムバーゲンなど様々な販促手法を混在させています。すると、全ての顧客が平等とは決して言えず、店が提供するお買い得商品やサービスなどの恩恵を受けられない顧客は一定数存在するのではないでしょうか。今回の記事では、そんな顧客がどのくらいの割合で存在するのか顧客データを用いて推測します。そして、小売業が着目すべき、店舗での購買における「3つの”ない”を持つ顧客」の実態について、顧客データを通して考えていきます。まずは、特定の曜日における”ない”顧客の実態です。

目玉商品の恩恵を受けづらい人が一定数存在する

例えばチラシにおいて、そこに掲載される目玉商品を購買できない人の割合を意識している売り手はほとんどいないのではないでしょうか。また、そのような人の割合を推測するデータについても見る機会はあまりないのではないかと思います。そこで、顧客に関するデータを一緒に見て、紐解いていきましょう。まず、チラシの効果は顧客が最初に目にする初日が最も高いといわれています。初日のチラシによりお買い得な目玉商品を掲載する傾向は高く、対象期間のスタート日は平日とする場合が一般的です。そのようなチラシの打ち出し方を考慮すると、特定の曜日、時間帯に来店できない顧客は平日のチラシ、売り切れ御免の特売商品の恩恵を受けづらい人たちと見ることができそうです。そこで、年間を通して平日に購買が一切ない顧客の割合と、特定の時間帯に購買が一切ない顧客の割合を、まず明らかにしてみたいと思います。

平日と土日に購買実績が無い人はそれぞれどれだけいる?

図表①は、平日しか購買実績がない人の割合と、土日しかない人の割合を、年代別に示したものです。左端の男女平均で見ると、平日の5日間に対して、土日が2日しかない違いもありますが、平日しか購買がない人が30・4%、土日しかない人では12・3%ということになります。土日のみの人はおよそ10人に1人であり、この値が、平日スタートのチラシの恩恵を被れない人たちの割合ということになります。これを年代別に見ると、平日しか購買がない人の割合は高齢になるほど高く、土日では逆に低くなる傾向にあることが分かります。

恐らく、これは高齢層では平日の仕事の都合に左右される人が少なくなるためだと考えられます。

図表① 平日及び土日しか購買が無い顧客の割合(全顧客対象)単位:%

さらに性別に示したものが図表②です。全体の傾向はあまり変わりませんが、平日しか購買のない人の割合は女性が高く、土日しか購買がない人では女性が低い傾向にあるようです。これは専業主婦の存在が影響していると推測されます。

図表② 平日及び土日しか購買が無い顧客の割合 性別(全顧客対象)単位:%

曜日別で見た際には購買が”ない”顧客をどうとらえるべきか

以上の実態から、チラシの恩恵を被れないと思える人たちの存在を、どう捉えればいいのでしょうか。実はその判断をするには、以上のデータだけでは十分ではないのです。なぜなら図表①②のように、全顧客を対象にした場合、年に数回しか購買実績がない顧客も多数含まれることになるからです。図表③は、外食を除く家計支出額において年間の購買額が、1人当たり平均の金額の3分の1未満の人を除いた顧客のみ対象としたものです。この結果が、図表①②と比較して、目立った違いがなければ問題ないと言えます。

図表③ 平日及び土日しか購買が無い顧客の割合 性別(年間の家計支出3分の2以上の顧客対象)単位:%

しかし、グラフを見てみると、全体の傾向に大きな違いはないものの、値が大幅に小さくなっていることが分かります。土日しか購買がない顧客の男女の平均値は共にわずか3%強しかなく、全顧客のグラフの12・3%から大きく縮小したことで、少なくとも曜日で見た場合の評価は、お店側が大きく問題視するほどの値とは言い難いです。

時間帯で見た場合はどうでしょうか。次回は時間帯別の”ない”顧客を見ていきます。

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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。

出典:食品商業2024年8月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第40回」

データアナリスト紹介
清原和明
1981年ダイエー入社。95年西明石店店長、98年九州SM営業本部北福岡ゾーンマネジャー、99年九州SM営業本部エリアマネジャー、2001年営業企画本部FSP推進部長、05年近畿販売本部営業部長に就任。08年消費経済研究所に出向し、常務取締役マーケティング担当就任。その後、ダイエー関東営業本部営業部長を経て、12年データコム分析推進室室長就任
掲載情報
こちらの記事は、食品商業8月号に掲載されています。
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