クラフトビールの購買傾向を徹底分析!豊富な品揃えと戦略的販売促進で売上アップを狙う

クラフトビールの取り扱いについて頭を悩ませていませんか?特に、クラフトビールのヘビーユーザーをターゲットにする際、その購買行動や嗜好をどう捉えるかは重要な課題です。今回はクラフトビールのヘビーユーザーがどのようにビールを選び、どのような購買傾向を持っているのかを詳しく解説します。

クラフトビールのヘビーユーザーとビール購買行動の傾向

購買頻度が高い商品について、ご紹介します。1つは、健康志向を謳う糖質制限の商品であり、もう1つは、前述した極小容量の135mlと小容量の250mlの商品です。

図表⑥  ヘビーユーザー別の新ジャンルとビールの購買点数の割合比較

 

ビールのヘビーユーザーである図表⑥Bの場合、新ジャンルの購買割合は15%強です。比較対象のビールが2割強だった図表⑥Aと比べて低い値ということは、ビールヘビーユーザーのビールへの執着の方が、新ジャンルヘビーユーザーの新ジャンルへの執着より少し強いことを示しているのでしょう。では、クラフトビールの場合はどうでしょうか。図表⑥Cのクラフトビールのヘビーユーザーは、ビールの購買割合がほぼ9割に達しており、ビールへの執着がより強いことが分かります。クラフトビールは、個性が強いこだわりのビールであるため、そのヘビーユーザーは新ジャンルにはあまり手を出していないという実態がうかがえます。

購買品目数とビール購買特性の違い

このようなデータに加えて、購買行動の類型において、クラフトビールのヘビーユーザーには他のヘビーユーザーと明らかに異なる点があることに触れておく必要があります。それは、一人当たりの購買品目数(以下、購買品目数)の違いです。

図表⑦  HU(ヘビーユーザー)別・年代別の1人当たり購買品目数

図表⑦の上段に示されているように、ビールのHUの購買品目数は、新ジャンルのHUのそれよりも高い傾向にあります。興味深いことに、図表⑦下段の新ジャンルのHUにおいても、ビールの購買品目数の方が多いという点は変わりません。さらに、特定グループ別に示した図表⑧において、いずれのHUでもビールの購買品目数が多いことから、それはビールの購買特性と見なすこともできるでしょう。

図表⑧  特定HU(ヘビーユーザー)グループ別・年代別の1人当たり購買品目数

そんなビールにおいてすら、極小容量缶(135㎖)のHUでは、購買品目数が顕著に低い値であることが分かります(図表⑧Aの❹)。前述の通り、品揃え自体が極めて少ないため、特定の極小容量缶に集中し、他の商品をあまり購買していないことを示す証拠かもしれません。自社や自店の棚割りを、一度チェックしてみることも必要でしょう。なぜなら、極小容量缶の品揃えがない店や、新ジャンルのそれが欠落している店が少なくないからです。

クラフトビールヘビーユーザーの特徴と販売促進策

そんな実態の中、購買品目数の多さで頭一つ抜け出ているのが、今回着目しているクラフトビールのヘビーユーザーです。その購買品目数は平均で16.8品目、30代から50代では17品目を超えています。クラフトビールを中心に、さまざまなビールを楽しんでいるグループといえそうです。購買行動を、お気に入りの特定ブランドを中心に購買するブランドコミットメントと、さまざまな商品を試すバラエティシーキングという二つの類型に大別する見方がありますが、クラフトビールのヘビーユーザーは後者に位置付けられる典型と考えられます。

従って、クラフトビールを品揃えする店が増えている中、このようなグループを満足させるには、少なくとも、多段ケース内の一部でコーナー化できるくらいの品揃えと、商品の特徴や訴求点を簡潔に表示することが必要です。また、ハレの日や、自分へのご褒美の一杯として、曜日によって関連販売を仕掛けるなど、目先を変える取り組みも欠かせません。税制改正後、ビールの売上が上向きに転じている今、購買品目数が高いビールの中でも、特にクラフトビールの販売促進に力を入れることで、こだわりの強いビール党の裾野を広げることにつながるかもしれません。

以上見てきたように、商品に共通する特性によって、その購買者の年代や購買行動が明らかに異なっていることがお分かりいただけたと思います。特性は、容量や機能性、テイストなど、いくつかの共通するキーで商品をグルーピングすることで探ることができますが、その知見をどのように品揃えに活かしていくかが最も重要です。「とりあえずビール?」から、今回紹介した実態を基に、品揃えや売り方の見直しを始めてみてはいかがでしょうか。

 

ビールの支持自体が再び上がっていることを考慮すれば、糖質制限ビールの選択肢が増えることは時間の問題でしょうし、そうなれば糖質制限商品において、普段は新ジャンル、週末や休日はビールといった具合に、うまく使い分ける顧客が増える可能性も高いです。それは売り手側、買い手側の双方にとって歓迎すべきことです。

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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。

出典:食品商業2024年6月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第38回」

データアナリスト紹介
清原和明
1981年ダイエー入社。95年西明石店店長、98年九州SM営業本部北福岡ゾーンマネジャー、99年九州SM営業本部エリアマネジャー、2001年営業企画本部FSP推進部長、05年近畿販売本部営業部長に就任。08年消費経済研究所に出向し、常務取締役マーケティング担当就任。その後、ダイエー関東営業本部営業部長を経て、12年データコム分析推進室室長就任
掲載情報
こちらの記事は、食品商業7月号に掲載されています。
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