個食用鍋つゆの愛好者はコンビニ愛好者?
以前から、「胃袋が縮む」ということは指摘されていましたが、
「孤食」の増加による1人当たりの購買金額の減少は無視できないのではないでしょうか。
これからの季節消費が拡大する鍋料理には、
栄養バランスの良さと関連購買数増加という両面のメリットがあります。
そこで、今回は定番化してきた個食用の鍋つゆにスポットを当て、消費者の購買行動を紐解いていきます。
孤食に対する食品スーパーの取り組みについて考えてみましょう。
家族構成から見る個食用鍋つゆの購買者特性
鍋料理の特徴として、温めた野菜の栄養成分は生以上に摂取されやすく、
肉、魚のたんぱく質も摂りやすいということがあります。
つまりは好みの物を、鍋に放り込めばいいわけで、洗い物も少なくて済みます。
今では1人分から使えて保存可能な個食用鍋つゆがどこでも手に入るので、孤食の場合でも重宝します。
しかし、問題となるのが具材の食品です。
例えば白菜の1/4カットでも、残さず食べ切れる量が欲しいとしたら多すぎます。
それ以下のサイズを揃えている店も少ないので、
調理用に事前にカットされた、鍋・炒め物用の野菜を購買する人は多いようです。
そのような購買傾向も含め、個食用鍋つゆの購買者特性についてまず明らかにしていきます。
まず、鍋つゆのヘビーユーザーを購入する容量で2グループに分割し、
個食用鍋つゆのみの購買者をSグループ、2~3人用以上の容量の鍋つゆのみの購買者をLグループとして比較していきます。
Lグループを基準に食品における1人当たりの購買回数を比較してみると、
Sグループは食料品全体の購買回数がLグループの88.5%しかなく、かなり少ないです。
容量の多い鍋つゆを頻繁に購買しているLグループは、家族構成数が複数のファミリー層の割合が高く、
個食用鍋つゆのSグループは単身者を中心に、家族構成数が少ないことがこの違いの要因と考えられます。
年代別割合についてもLグループの方が40代、50代の子育て世代の割合が高く、その傾向がうかがえます。
個食用鍋つゆ購買者のキーワードは即食、簡便
家族構成が要因だとすると、野菜から加工食品まで7部門で比較した時にもすべて低い値にあるかと思われますが、
その通りになっていないのが注目すべきポイントです。
惣菜部門だけSグループの方がLグループより1人当たりの購買回数が多くなっています。
さらに惣菜部門の主要カテゴリーの内訳を見ると、
いずれのカテゴリーもLグループと比較した時の購買回数が100%以上になっており、
特に弁当類、おにぎり類が突出してよく買われています。
若い世代が全年代の中で特に惣菜類の購買が多い傾向にあり、
その世代中心に一人暮らしの特性が表れた実態と見ることができそうです。
同じくカテゴリーで見た場合、惣菜部門のようにSグループの値が、
Lグループよりも高い事例はあるのでしょうか。
まずは生鮮3部門を見てみます。
ほとんどのカテゴリーでLグループより購買回数が少ないことが一目でわかります。
中でも特に畜産、水産部門の低さが際立っています。
青果、水産部門ともにほとんどのカテゴリーで購買回数が下回っていますが、
果物の一部が100%をわずかに超えているように、
即食可能や、調理の手間の掛からない商品が多いカテゴリーはSグループでも購買されやすい傾向にあるようです。
サブカテゴリーで見ても、生食用や鍋・炒め物用のカット野菜、カットフルーツなど
そのまま使える野菜や果物はSグループの方が際立って購買されているものがありました。
鍋つゆ購買者の同時購買商品
鍋つゆの購買グループで見ていることもあり、
全カテゴリーの中でSグループがより購買していたのが鍋・炒め物用カット野菜でした。
そこで、LグループとSグループの同時購買商品の※リフト値上位20品目を比較してみます。
両者で明らかに違っているのは、鍋用の麺類が大半を占めているLグループに対して、
Sグループは調理用に事前にカットされた複数の野菜セットが、上位10位内の半数以上を占めていることです。
また、一人生活者が多いと推測されるSグループの上位20品目に
鍋に人気の麺類マロニーのショートタイプ(少量)がランクインしていることも、
食べ切りという視点から着目してもよさそうです。
※リフト値:同時購買(バスケット分析)に用いられる基本的な指標であり、
ある特定の「商品A」の購買者が、同時に「商品B」 も一緒に購買する確率を表す。
その値が高いほど同時購買される確率が高いことになる。
コンビニ利用者と重なる個食用鍋つゆ購買者
生鮮以外の日配食品や加工食品でも、そのままもしくはレンジで加熱すれば食べられるような
簡便、即食の商品がSグループに購買されやすくなっています。
日配では餃子やシューマイの中華惣菜類、主食となる惣菜パンなど、
加工食品ではパックご飯やインスタント食品などの値が高くなっています。
一方で、頻繁に自分で調理する人ほど使用回数が増える基礎調味料のカテゴリーは
いわば簡便、即食商品の対極のカテゴリーであり、Sグループの購買は著しく少なくなっていました。
ここまでまとめてきたSグループの購買特性は大部分がコンビニを頻繁に利用する人と重なり、
改めて一人暮らし、孤食がキーワードと言えるのではないでしょうか。
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データアナリスト紹介
清原和明
1981年ダイエー入社。95年西明石店店長、98年九州SM営業本部北福岡ゾーンマネジャー、99年九州SM営業本部エリアマネジャー、2001年営業企画本部FSP推進部長、05年近畿販売本部営業部長に就任。08年消費経済研究所に出向し、常務取締役マーケティング担当就任。その後、ダイエー関東営業本部営業部長を経て、12年データコム分析推進室室長就任
こちらの記事は、食品商業11月号に掲載されています。
本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:食品商業2023年11月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第31回」
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