急成長を遂げるベトナム小売レポート

今回はベトナムの小売業について、筆者が現地で見聞きした内容をもとに紹介していきます。
ベトナムは人口、GDPともに100%を上回る伸び率であり、東南アジア地域の中でも、安定した成長が見込まれる国として最も注目されています。
そんなベトナムの小売業界では、経済の成長とともにどのような変化が訪れるのでしょうか。

ベトナム小売業界の特徴

ベトナムの小売業と言われてまず思い浮かぶのが、「パパママストア」です。
パパママストアとは家族経営の小規模店舗を指し、主に日用品を扱っています。ベトナムではパパママストアが約80万店舗あると言われ、伝統的な小売のスタイルとして地域住民の生活に根付いています。

また、ベトナムでは市場も主流です。生鮮から乾物まで大量の商品が並び、購入の際には、店主と交渉しながら価格を決めるというアナログなスタイルです。これらの個人経営による小規模店舗や行商、伝統的な市場などを一般的にトラディショナルトレードと呼びます。

ベトナムでは日本をはじめとした多くの国で普及している、スーパーやコンビニなどのチェーンストアを始めとするモダントレードよりも、昔ながらのトラディショナルトレードが圧倒的に主流となっています。

ハノイのとあるパパママストア

未だに地域住民から厚い支持を得るトラディショナルトレード

日本ではあまりイメージが湧きませんが、地域住民の日常使いに関してベトナムのトラディショナルトレードの需要はまだまだ健在なようです。

パパママストアでは顧客がバイクを店頭に乗り付け、バイクに乗ったまま店主に商品を注文し、商品と引き換えにお金を払うというやりとりを目にしました。
日本のドライブスルーのようにも見えますが、サービスとしてではなく慣習や文化としてそういった買い物のスタイルが根付いているように感じました。
バイク保有世帯が全世帯の86%と世界2位の保有率を誇るベトナムのバイク文化を考えると、バイクに乗ったままふらっと買い物ができる利便性もパパママストアが支持される要因と言えそうです。

また、ダナンのコン市場では市場の奥まで歩いていくと、簡易的な屋台が並んでおり、そこで食事をする現地の方々の様子がうかがえました。
市場は食料や日用品の調達から食事まで済ませることが出来る場としても機能しているようです。

このように生活に根付いたトラディショナルトレードは、まだまだ地域住民の支持を得ています。
実際に、ベトナムの小売業のトラディショナルトレード比率は約80%となっており、数字の上でもマーケットの中心になっていることが分かります。

コン市場の屋台の様子

モダントレードへと移行するベトナム小売業

そんなベトナムの小売業界ですが、国策としてはモダントレード比率を上げていく意向があるようで、2017年にベトナム商工省が小売業発展に関する計画案を公布しています。その草案によると2025年までにモダントレード比率を35%に、2035年までに50%まで引き上げると明示しています。

その効果もあってか都市部では近代型商業施設も増加傾向にあり、トラディショナルトレードからモダントレードへの過渡期であると言えます。

モダントレードの充実したサービス

増加傾向にあるモダントレードではスーパーのアプリや宅配サービスが印象的でした。

まずアプリについては店舗の入り口や売り場のポップ、天井から吊るされた広告など様々なところで訴求されており、アプリに力を入れている様子がうかがえました。

実際にスーパーのアプリをインストールするとホーム画面に商品が並んでおり、購入から配達やピックアップの注文まで出来るものもありました。

次に宅配サービスですが、ベトナムスーパー大手GO!(旧BigC)では店内で購入した商品の宅配サービスを実施していました。利用の条件として1500円以上の購入、店舗から7km以内、生鮮食品は対象外など規定があるものの、大量購入するユーザーにとっては非常にありがたいサービスであると言えます。

実際にショッピングモール内の店舗では、買い物後に荷物を配送して、手ぶらで映画を観に行くという使われ方もされているそうです。

このようなサービスの利便性を武器にモダントレードのシェアは徐々に拡大していくのではないでしょうか。

おわりに

ベトナムの小売業の現状としてはまだまだ発展途上で、パパママストアや市場など伝統的な商売が栄えている様子は日本とのギャップを感じました。

一方で、近代型小売の成長も目覚ましく、アプリやECなどネットを介するサービスは日本の小売業にも劣らない印象を受けました。また、フードデリバリーについてもベトナムの文化が反映された利便性があり、今後のさらなる成長が楽しみなマーケットであると言えます。引き続きベトナムの小売業の動向に注目し、レポートしていきたいと思います。

 

 

 

執筆者プロフィール

経営推進部 マーケティング室 小林祐太

2021年入社。コーポレートサイトのコンテンツ作成を担当。